2021
12.06

焦点距離の違いによる商品の見え方とパースペクティブについての解説

商品撮影講座

商品撮影における遠近感

1.写真における遠近感 レンズの違いによる写真表現の方法。広角レンズは広いところを広く撮る? 望遠レンズは遠くのものを大きく写す?だけじゃない使い方

2.同じ位置からレンズを変えて撮影 当たり前すぎることですけど同じ撮影位置からレンズを変えて商品撮影した時の写り方の変化を見ます。

3.レンズを変えながら撮影位置も変えて撮影 レンズを変えながら商品の大きさが変わらないように撮影距離を調整します。

4.実際の商品撮影での遠近感 商品の撮影でも遠近感は必要です。実際の撮影で検証します。

5.まとめ 撮影における遠近感(パースペクティブ)の説明

写真における遠近感

カメラのレンズに焦点距離ってありますよね。デジイチなどいろんな焦点距離のレンズが沢山揃っていてどれを買っていいのか迷うくらいです。

これって遠くのものを拡大して撮影するのには望遠レンズ その反対に大きな建物や狭い室内 広大な景色などは広角レンズを使って撮影するとみなさん思ってらっしゃる方が多いのではないでしょうか。

確かにその通りで間違ってはいないのですけど、基本的な写真の表現の考え方でもっと有効にさまざまな焦点距離のレンズを使える方法があるので解説します。

私が若い頃は一眼レフカメラを買うと50mmの単レンズがもれなくセットでついてきました。

現在のフルサイズデジカメ(センサーの大きさが変わると同じ焦点距離でも写る範囲は変わります)の場合標準レンズというと大体ズームレンズがついてくるから標準ズームは24〜70mmってことになるのでしょうか。
昔の標準レンズ50mmの両側ということで利便性をはかっているのでしょう。

商品撮影において50mmは少し広いレンズです。

なぜならこの焦点距離ですと必要以上に商品に近づいて撮影しなくてはならないのと商品に近づくと遠近感が強調されて画像が少し歪んでしまう可能性があります。

私のスタジオではフルサイズデジカメでの撮影の場合特殊な場合を除いて 90mmか135mm  化粧品などの反射するものでなるべく離れて撮影したい場合は180mm望遠系と言われているレンズを使用しています。

それではここからいくつか作例を使って解説してみましょう。

撮影の実例 同じ位置からの撮影

まずカメラを同じ位置に置いてレンズだけを変えて撮影してみましょう。

撮影の距離は商品からカメラのセンサー位置まで1m60cmです。

少し細かいですが8段階の焦点距離の撮影です。

180mm 135mm 90mmは単レンズです。
70mm 50mm 35mm 28mm 24mm は 24~70mmの標準ズームを使いました。

通常撮影する時には作例A-3の位置が標準です。

当たり前ですけど距離が変わらなければレンズを変えても画角だけ変わって行くだけです。

ここでよくみてほしいのは作例A-1からレンズが広角になっていくに従い写る範囲は広くなっていき、中心にある箱は徐々に小さくなっていきます。

しかも形は一切変化なく歪まないし崩れていません。
仮にトリミングして切り取ってもみんな同じ形。

撮影する距離が変わらなければレンズを交換しても写る範囲は変わっても箱に対する遠近感(パースペクティブと言います。)は一定です。

なにを当たり前のことを言ってるんだと思っているかもしれませんが、撮影する上で結構重要なことなのです。

商品までの距離を変えて撮影

今度はレンズを変えると同時に商品の大きさを画面の中で合わせて商品とカメラの距離を変えて徐々に近づいてみましょう。

これが結構面白いのですよ。

下の作例Bを見てください。

作例Aと同じで180mmから順番に8段階の焦点距離で撮影しました。

分かりやすいところで作例B-3 レンズは90mmで1m60cmの位置にカメラがあります。

徐々に箱にパースがかかってきていることがわかりますか。

見かけ状奥に向かって箱の形がすぼまってますよね。

作例6〜8は撮影距離が60cm以下まで 90mmレンズより1/3の距離に近づいてかなり形が変わってきています。

背景にも注目してください。
作例B-3 90mmのレンズでの撮影は撮影台が画面からがはみ出していません。

作例B-4から背景の撮影台の両サイドが見えてきています。

背景が徐々に遠くに見えています。

カメラが商品に近づいているのに背景はどんどん遠ざかっています。

作例に使用している箱は直方体で実際には対面する辺は完全に並行でどこまで行っても交わることがありません。

左の直立している面に対する辺は作例B-1~B-3までは並行に見えますが 作例B-4から左奥に向けて見かけの上 消失点に向かって集中するように見えます。

作例B-8に至っては正面の面に対する辺も右にかなり傾いて見えます。
これを言葉で言うとパースがかかって遠近感が強調されると言います。

遠近感の違い

作例D-1を見てください。作例B-3にわかりやすいように消失点に向けてラインを入れました。こちらは緩やかに一点に集中しています。作例D-2(作例B-8にライン)は商品とカメラの距離を近くにして広角レンズで撮影したため急激に消失点に向かっていきます。

このことにより撮影する距離により撮影商品のパースペクティブ(遠近感)が変わることがわかりました。

商品撮影のレンズの選択

撮影するレンズを選ぶという行為は 決めたパースペクティブ(遠近感)を再現するために撮影商品が画面に収まるレンズをチョイスするということです。

撮影レンズを先に決めてしまうと撮影する大きさが決まっているのでパースペクティブも決まってしまい撮影をする表現方法が狭まってしまうのです。

これはどんな撮影にも言えることで例えば風景写真やモデル撮影にも応用できる撮影の考え方のひとつです。

パースペクティブを考えて商品撮影

それでは今度は商品撮影でよくある並べ方で 撮影する距離(レンズを変えて)を変えてパースペクティブの変化を見てみましょう。カメラの角度は変えていませんので真っ直ぐ商品に近づいています。

徐々に近づいてレンズを変えていきます。

このような撮影で常識的に使う4つの焦点距離で撮影しました。

手前に置いたパウチの底辺が徐々に大きくなっていてパースがついています。

箱もカメラが下がっている分天面が見えにくくなって徐々商品に近づいているにも関わらず小さく遠くに見えていきます。

ラインを入れてみましょう。

作例D-3 90mmのレンズでの撮影です。
挿入した消失点に向けたラインも緩やかです。

ラインの作例D-4 35mmのレンズで撮影したものは急激に消失点に向かうラインになり少しパースがつきすぎですね。

私はこういった撮影の場合パウチを強調して表現したいときには短めのレンズを使います。
しかし通常は中望遠系のレンズで箱もパウチもどちらも見えやすい距離と高さにカメラを設置して撮影します。

まとめ

長々と解説してしまいました。まとめに入ります。

繰り返しになりますが作例Aのように焦点距離によりパースペクティブに変化を起こさせることはできません。

同一視点から撮影する場合焦点距離を変えても画角が変わるだけで焦点距離の変化とパースペクティブは無関係なのです。

作例Bのように撮影商品(被写体)とカメラの距離により左右されるのです。

撮影時に考えること
その商品に対するパースペクティブを考え最良の遠近感にするための最適なカメラ位置を設定する。

そしてそのときに画面上で商品がいっぱいに写るレンズをチョイスする。

ということでしょうか。

撮影するときに色々と制約があるとは思います 例えばスタジオが狭くて後ろに下がれないとか表現したい遠近感に合うレンズがないとかさまざまです。出来ないことを回避してその場で判断するのにこれらの知識がわかっているのとわかっていないのとでは雲泥の差があるのではないでしょうか。

もし 所属先で撮影しろと無茶振りされたとき ぜひ役立ててください。
手に負えないときには ご連絡ください。

私たちが撮影します。(笑)


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